先日、綯屋の横畠さんから、新しい箒が届きました。
初回のオーダーでは現代の生活でも使いやすい半手箒を、2度目、3度目は色々な用途で使える小さな箒たちを仕入れ、今回で4度目の入荷となります。
※下記の記事にて、それぞれの箒を詳しく紹介しています。
今回は半手帚を3本オーダーしましたが、初回とは違う形をお願いしたので、こちらでご紹介させていただきます。
眼鏡型の半手箒
3本の半手箒のうち2本は「眼鏡型」と呼ばれる形。
柄の付け根に2つの穴が開いたように穂が継がれ、その名のとおり、眼鏡のような形になっています。

眼鏡型の半手箒は、横畠さんの活動拠点、常陸太田市周辺で昔から作られていた同型の長柄箒を半手にアレンジしたもので、柄と穂の接合部が通常の箒よりも抜けにくい構造になっているとのこと。
また、編み込み部分の中身が少ないので、軽量な仕上がりになるそうです。

角ばらないように、なで肩の形を意識しているとのことで、やさしい印象の箒です。

今回オーダーさせていただいた眼鏡型箒に使われている糸は、南天にミロバラン(シクンシ科植物の名前です)を加えて煮出し、鉄触媒で染めたもの。少し柔らかい感じのグレーがどこか現代的で、眼鏡型の伝統的な形と面白い対照になっていると思います。

柄は白竹と黒竹の2種類。お好みにあわせてどうぞ。
楮柄の半手箒
今回入荷の残りの1本は楮(こうぞ)柄の半手箒。
楮の枝を柄にした半手箒で、実は私たちが普段店舗で使っているのもこの形なのです。
柄を握ったときの手に馴染む感じが好きなので、多くの方に試していただきたいと思い、製作をお願いしました。

ご存じの方も多いかと思いますが、楮は和紙の原料になる植物で、和紙には皮の部分を使います。
楮は木の枝の中では軽く箒に適しているので、横畠さんは和紙作家の方から残った枝を分けていただいて箒を製作しているそうです。
持ち帰った楮の枝を川で洗ってぬめりを落とすのが最初の工程。
ホウキモロコシをご自身で育てるところから箒の製作を始めるのと同じく、とことんまで自然と向き合う姿勢に、頭が下がります。
皮を剥いた後の楮の枝は、その年によってつるつるだったり、スジが入ったりと個性があり、それも面白さのひとつだとおっしゃっていました。

楮の枝はまっすぐに伸びるものが多いそうですが、竹と違って直線的ではないので、曲がりに合わせて箒の重心を決めて製作しているとのこと。枝をさすわずかな角度の違いで、履く際の重みの感じ方も大きく変わるので確認しながらの作業になるそうです。

こちらは染色なしの白糸のみの展開です。
綯屋の形
最初に横畠さんに箒をお願いしたのは、2022年の夏だったでしょうか。
その際は、半手箒と細半手という、どちらかいうと一般的な形の箒を作っていただきました。
どこにでもある普遍的な形で、作りの良い箒。
当時はCacicaで箒を取り扱うのが初めてだったので、個性的でないものの方が良いと思ったのです。

それから数年が過ぎ、ふと店内を見まわしたときに、綯屋 / 横畠さんの箒がCacicaの店頭に馴染んできたように感じられたのです。これなら「綯屋らしさ」が感じられるものを並べられる。そう思って、今回は綯屋 / 横畠さんならではの箒を知っていただきたく、一歩踏み込んだオーダーをしてみました。
身の回りで手に入れた素材を、その土地に伝わる手法で形にしていくこと。
それこそが、横畠さんならではの「形」なのではないかと思います。
どの箒も少しずつ個性がありますので、ぜひ一度、お手に取ってご覧ください。